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モノクローム・ロマンス最新作「叛獄の王子」刊行記念 C・S・パキャット先生、冬斗亜紀先生インタビュー!

 C・S・パキャット先生

 
憎しみ、引かれ合う強く美しいふたりの王子の物語「叛獄の王子」。海外で絶大な人気を誇るこの作品がついに日本でも刊行の運びとなった。その記念として著者のC・S・パキャット先生と、翻訳の冬斗亜紀先生からコメントをいただきました。
 

C・S・パキャット先生インタビュー(訳・冬斗亜紀)
 

――――この話を書いたきっかけは?

 
 自分が読みたい話を書きたいと思った。もともとスリルのある濃密なエンターテイメント、男同士のエロティックロマンス、力のぶつかり合い、性的指向のテーマが大好きだし、正反対の組み合わせに惹かれる。清廉潔白な正義の味方が正邪の境が曖昧なアンチヒーローに出会ったら、何が起こるだろう? 血の気が多い戦士と誰の手も届かない氷の王子が出会ったら? 率直な男と、狡猾そのものの男が?
 王子という存在にも、たまらなく魅了される――いわゆるおとぎ話の王子様ではなく。王子はかりそめの存在であり、その立場は永続的なものではなく、そしてその存在意義を満たして王となるためには、誰かのいた場所を奪い、そこに代わって座らねばならない。その奪取や代替のプロセスは、私にとって非常に強烈なテーマ。王子が奴隷となるというアイデアに、たちまち熱中した。
 

――――シリーズの中で、どのシーンを書くのが一番大変でしたか?

 
 セックスシーン! いざ書くとなると不安で、事前に緊張してしまって。
 

――――一番お気に入りのキャラクターは?

 
 一人だけは選べない! 
ローレントは、危険で、受けた傷を自分の力に変えて強くなっていったところが大好き。マキャヴェッリ的な、徹底した現実主義なところ、そしてまさに「氷の王子」といったあの姿もたまらなくお気に入り。
 デイメンは、勇猛なヒーローであるところが大好き。ヒーローの中のヒーロー。作品の中で彼の存在を通して、そういうヒロイズムへの皮肉も入れることができたし、同時にその素晴らしさを書くこともできた。
 この二人は、お互いといる時が一番真価を発揮すると思う。マキャヴェッリとアレクサンドロス大王とで、ゴルディアスの結び目――さまざまな難題に立ち向かい、切り抜けていく。
 

――――このシリーズを書くにあたってのテーマは?

 
 「見た目どおりのものなど何もない」
 

――――各国でベストセラーになっていますが、それについてどう感じていますか?

 
 みんながこの話を好きになってくれてとてもうれしい! 「Captive Prince」が本として出版されるなど思っていなかったし、こんなに人気が出るとも思っていなかった。2014年に、あるエージェントから「この本を大手のペンギン・グループに売り込めると思う」と接触された時、正直信じていなかったけれど、運を天にまかせる気分で彼女と契約した。向こうから吉報の手紙が(メールだけれどね)届いた時は、まさに夢のようだった。人生が変わった。
 

――――今度は日本語版が出ます。日本の読者にメッセージを!

 
 ハロー! こうして素晴らしいイラストと翻訳で日本語版を出すことができて、本当に幸せで特別な気持ちです。まさに「原点に戻った」気分――だって、このシリーズのアイデアを思いついたのは私が東京に住んでいた時だったから。
 日本は私にとってとても大好きな場所で、日本の絵や小説にとても影響を受けた。皆さんがこの話を楽しんでくれますように!
 

――――日本の作品で好きなもの、影響を受けたものはありますか?

 
 日本の物語が大好き。日本の漫画からはよく、既成概念に束縛されない自由さ、想像力をどこまでもはばたかせようという力強さを感じる。それに加えて日本のファンタジーは、キャラクターの原型/定型というものと、そうした基本のキャラクターが物語を引っぱっていく力を、非常に洗練された形で理解しているように思える。
 アニメで一番好きなのは「少女革命ウテナ」で、まだ十代のころに見た。きらびやかな映像と男女逆転に惹かれたし、この物語が見る人に問いを投げかけてくるスタイルにハマった――「もし女の子が男の子の役割を奪って、姫を助ける王子として剣を取ったらなにが起きる?」と。
 初めて読んだ漫画は「東京BABYLON」(CLAMP)で、その情熱と、中心キャラクターを取り巻く運命論を通して、許しがたい宿敵の間でのラブストーリーがどれほど熱いものになるのかを知ることができた。
 のちに「炎の蜃気楼」(桑原水菜)を読んで、その中で典型的な力関係が逆転しているところに惹かれた。年上の力のある男が年下に仕えていることで、生き生きとした魅力的な力関係が生み出されている。このシリーズでは、自分ではどうにもできない身分の差の中でもがくテーマが描かれることが多かった。その中で、身分や力の差を互いへの愛で埋めていけることも表されていて、これは私にとって今でも本当に大切な主題。
 今好きなのは「囀る鳥は羽ばたかない」(ヨネダコウ)で、正反対のキャラクター同士なのに互いを補完しているところがとてもいい。どちらも傷ついているけれど、どちらも力強い。それに、絵がすごく素敵!
 

――――次回作について聞かせてください

 
 丁度、新しい作品にとりかかって、すごくわくわくしているところ。今度はヤングアダルト向けのファンタジーで、魔法も出てくる世界が舞台。今は世界観や、登場人物の間の反発や愛憎を構築している。
またこの段階の作業ができるのはすごく楽しい。まっさらな状態から何かを作っていける…まさに新しい船出!
 

――――ありがとうございました!

 
 
冬斗亜紀先生インタビュー
 

――――この本は翻訳家である冬斗さんご自身の強力なプッシュがあったと聞きました。
なぜこの本を翻訳しようと思ったのでしょうか。

 
 このシリーズに関しては、ファンタジー好きの血が騒いでたまりませんでした。まず「物語」としての骨格が非常に強い。さまざまな萌えツボや萌えシーンがある中で、それを編み上げるようにして二つの国の運命を決める話になっていくところが読んでいてもぞくぞくします。

 

――――個人的に、どのキャラに思い入れがありますか。

 
 王子二人は別格として、ニケイスがたまらないですね…(あと実はジョカステもお気に入り)。

 

――――翻訳で工夫しているところは。

 
 世界観を伝えることと、それを壊さないような言葉選びには苦心しました。それぞれの国のキャラ名や地名をカタカナにするのには、作者さんがどんな発音でイメージしているか相談して、参考にさせてもらいました。

 

――――この話の特に好きなシーンは。

 
 いいシーンはいろいろありましたが…あえてひとつ選ぶなら、一巻は最後の場面ですね。いろいろな人間のこれからの運命を暗示するような一瞬が、さりげなく、いくつも盛り込まれてます。

 

――――海外では評価が高い作品と伺いましたが、海外でこの作品はどのように受け止められているのでしょうか。

 
 3巻の発売の時には広告がオーストラリア(作者のパキャットさんがお住まいです)のバス停に出たり、新刊が空港の書店にまで積まれていました。パキャットさんもラジオや新聞からインタビューを受けたりと、ゲイロマンスという枠を超えて広く読まれていると思います。アメリカの大衆紙USA Todayのベストセラーリスト(全ジャンル対象)にも入りました。
 もちろんM/Mとしての人気も絶大で、ファンアートもネットでたくさん公開されてます。

 

――――これからの物語の展望は。

 
 2巻以降、一気に物語も人間関係も広がりを増し、キャラクターの新しい面に光が当てられます。人間関係も変わっていくし、その中で登場人物たちもそれぞれに変わっていきながら、策略や罠をかいくぐろうとする。さらに濃密で、息を呑むような激しい展開に突入していきます。楽しみ!
 
 
  試し読み

モノクローム・ロマンス文庫
「叛獄の王子① 叛獄の王子」
C・S・パキャット
冬斗亜紀 (翻訳)
倉花千夏 (イラスト)
4月9日(土)発売予定
予価本体;900円+税
 
享楽の園、ヴェーレの宮廷で日々繰り広げられる響宴。
隣国アキエロスの世継ぎの王子デイメンは、腹違いの兄に陥れられ、
ヴェーレの王子ローレントの前に奴隷として差し出された。
手枷と首枷をはめられ、氷の心をもったローレントから屈辱的な扱いを受けるデイメン。
しかし彼は心の自由を失ってはいなかった。
 
そんなある日、己のうかつさから鞭打ちという罰を与えられ、
ローレントにさらなる憎悪を抱くデイメン。
しかし自国の民を救うため、彼はローレントの前に跪くのだったーー。
 
宮廷内で蠢く陰謀と愛憎。ふたりの王子の戦いが、幕を開ける!
 
●著者紹介
C・S・パキャット
C.S.Pacat
 
オーストラリア生まれ、メルボルン大学卒。
メルボルンやイタリアのペルージャなどを含め、さまざまな都市で暮らしてきた。
東京にも5年間住み、出版業界で働くうちに日本の小説や漫画を読み始めた。
日本のアートと文化を愛し、日本は大好きな国のひとつ。現在はメルボルン在住。
 
●翻訳家紹介
冬斗亜紀
Aki Fuyuto
萌えと勢いで原書にはまり、M/Mの沼に足を踏み込んで今に至る。
M/Mレビューサイトをまったり運営中。
 
●イラストレーター紹介
倉花千夏
Chinatu Kurahana
11月24日生まれ、B型。神奈川県出身。原画家・イラストレーター。
主な仕事に『うたの☆プリンスさまっ♪」キャラクターデザイン、アニメキャラクター原案、
『V.T.R』(著:辻村深月/講談社文庫)表紙イラストなどがある。
 

 

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