TA・Iさんのものがたり講座日誌
「スクリプトドクターのものがたり講座 第一回」
今週から全十回を通して行われる「ものがたり講座」。今回の内容は「ものがたりと認知」についてです。
初回ということを踏まえ、まずは隣の席の方とペアを組んでちょっとしたゲームを行いました。「相手の心の動き」に敏感になることと、「自分の心の動き」に自覚的になること。ものがたりを理解する上で“カタチよりキモチ”を重視するこのクラスでは、このような意識は常に必要になります(ストーリーを考える上でも、映画のキャラクターや、観客である自分達の「こころの動き」を意識することは大事ですね)。
そしてそこから講義は「認知」、そして「共感」の話へ。“ものがたりは人生と切っても切れない関係にある”とする三宅さんならではの話が行われました。
次回は「三幕構成」についてです。
「スクリプトドクターのものがたり講座 第二回」
前回の「ものがたりと認知」に続き、この日は「三幕構成」についての講座でした。
「構成」と聞いて何か型を決めらるような気がする方も多いかもしれませんが、三幕構成とは企画内容やストーリーラインを縛るものでなく、むしろ今後皆さんにとって強力な武器となるものです。
各幕の役割を、既存の映画を例に挙げながら詳しく説明していきました(三宅さんの講座は、度々有名な映画にあてはめながら進めていくので、とてもイメージしやすいのです)。
予定を10分以上越えながらも、あっというまの濃密な講座となりました。
次回は本日の講座の続き、「ストーリートライアングル」について学んでいきます。
「スクリプトドクターのものがたり講座 第三回」
今回は【ストーリー・トライアングルとアーキタイプ】についてです。
時代を越え、原始社会から現在に至るあらゆる社会の基礎を成す「ものがたりの基本構造(=クラシカルデザイン)」。
講義前半はこの“クラシカルデザイン”と、その要素の集合体である“アークプロット”を中心に講義は進められました。
古代メソポタミアのシュメール人が記した「ギルガメッシュ叙事詩」の内容が紹介され、紀元前の時代から既に現代にも通ずる「普遍的なものがたりの構造(=クラシカルデザイン)」が作られていたことに驚きながら、そこから応用し魅力的な「ものがたりを作るため」に必要な「要素(=アークプロットの内訳)」とはどのようなものか具体的に見ていきました。

そして後半は“アーキタイプ”について。
まずは、心理学者ユングの定義の則り「集合的無意識」について考えます。
ひとの心の内面を三つの層に捉えたうえで、個人的体験から構築される第二層「個人的無意識」が生み出すコンプレックスと、人類に普遍的に備わっているとされる第三層「集合的無意識」に存在するアーキタイプを対比しながら講義は進められました。
人間がより良く生きていくための指針となるアーキタイプ(元型)とはどのようなものなのか?
また、どうすればアーキタイプを創作の味方にひきつけられるのか?
「意識」と「無意識」、「表層」から「深層」へ、と内容に平行して講義も深く迫っていきます。
プロット(=物語の因果関係)の重要性と、アーキタイプ(=ひとの心の普遍性)の重要性。双方をじっくりと細かに見ていきながら実践とその道のりを考えていく“スクリプトドクターのものがたり講座”ならではの講義となりました。
次回の講義は「男性神話」についてです。
「スクリプトドクターのものがたり講座 第四回」
今回は【男性神話】について。前回学んだ「アーキタイプ(=元型)」を、「男性神話」と「女性神話」の2回に渡って探っていきます。
男性神話とは、「ヒーローが旅する」物語ではなく、「ヒーローになる為の旅」の物語であるとのこと。そんな男性神話で描かれるべきヒーローの旅を、3幕12ステージに分けて探っていきました。
平凡な世界に暮らす主人公への冒険の誘い、門番を越えて現れる同士や敵、そして迎える最終決戦・・・
これだけを見ると「ファンタジー映画」に限定されそうですが、実は多くの映画・物語が同じ道を辿っているのです。
さらにいうと男性神話は映画や物語だけでなく、人生とも深い関わりがあります。
安全な環境に身を置く若年期は、様々な危険から守られている代わりに、社会への不安や恐怖心、すなわちコンプレックスを育みやすいものです。
克服すべき課題を乗り越えるためには、師や先輩にあたる人物らと出会い、切磋琢磨を繰り返す必要があります。しかし、そのためには、自らを甘やかせている環境から飛び出し、社会との関わりを深める「冒険」をはじめなくてはなりません。
男性神話の構造は、それ自体、若者が社会人として自立していくための道程であり、コンプレックスを克服し成長していくための道標でもあります。
神話に秘められたそれらの道程を、いかに抽象化した形で大きく深いところで理解するか。ここがアーキタイプから学ぶこの講座の重要なポイントです。
事前に課題として『スターウォーズ』(1977)、『エイリアン』(1979)を各々見てきたことで実作品と照らし合わせながら進む講義は、「ものがたり」をより一層深く考える機会になったのではないかと思います。
次回「女性神話」を学びます。
「スクリプトドクターのものがたり講座 第五回」
前回の【男性神話】に続き、今回は【女性神話】についてです。
今回も事前に課題として出た『マダム・イン・ニューヨーク』(2012)と『デンジャラス・ビューティー』(2001)+αを例に挙げながら、【女性神話】について考えていきました。
“自分の属するコミュニティが望む生き方”と“自分自身が望む生き方”
ふたつの人生の狭間で引き裂かれ、葛藤する人物が女性神話の主人公です。
親や会社、部活動や社会組織などからの「望まれたままの生き方」に別れを告げ、正直に生きようとするには、数多の「苦難」が待ち受けます。それでも自分を信じ、潜在能力を発揮しながら、勇気ある選択と行動を繰り返す女性神話の物語構造を3幕13ステージに分けて順に辿っていきました。
いわゆる「おとぎ話」の軌道として知られる女性神話は、ビジネスのロールモデルとしての機能も果たす男性神話に比べ、軽んじられる傾向にあります。しかし、未来に希望が持てず閉塞感に苦しむ現代人(とりわけ日本人の若者)にとって、女性神話を研究し人生の指針とすることには極めて重要な意義がある、と三宅さんは言います。
たしかに女性神話の流れを実践し、行動することで救われるひとは多い気がします。
男性神話同様、女性・男性の区別なく当てはまる物語の典型としての「女性神話」を構造から学ぶ今回の講義。最後は、女性神話の終わりは男性神話の始まりであり、男性神話が終わってもまた女性神話が始まる、という話題で締めくくられました。
人生において克服すべき問題は決してなくなることはなく、若年期から老年期への成長は円環を描きながら重ねられるものなのかもしれませんね。
さてあっという間に5回の講義が終わりました。ミッドポイントを越え、「ものがたり講座」がこれからどのような道を辿るのか、楽しみですね!
「スクリプトドクターのものがたり講座 第六回」
今回は神話シリーズの最終回。
【神話と人生の関係性】を軸に、神話構造についてのまとめの講義となりました。
三宅さんは長年シナリオ術の教鞭を執ってきて、ひとつ気になっていることがある、と言います。
それは、神話構造を“単なるテンプレート”と解釈してしまう生徒が跡を絶たないということ。「これが理解できれば物語が「簡単に」作れるに違いない!」と過度に頼ってしまったり、或いは逆に「この流れの通りに書かなければ!」と抑圧されてしまったり……。
神話の構造を「原則」ではなく、「規則」として扱ってしまうことの危険性についての話題から講義は始まりました。大切なのは、個々の企画に対しいかに構造を“活かす”かであり、その逆ではない。だからこそ“カタチ”ではなく“キモチ”で理解することが大事なのだという、初回から通じる「ものがたり理解の心構え」を改めて見つめ直す機会となりました。
後半は、「承認欲求」の物語である女性神話と「通過儀礼」の物語である男性神話を、今この「ものがたり講座」を受けている受講生皆さんの現状に照らし合わせたりもしながら、日常生活と物語(=フィクション)を行き来して考えること、理解を深めそこから行動に活かすこと、についての話になりました。
さて複数回に渡って学んだ神話構造。理解はしたが、では書けるのかという問題に次回から入っていきます。次回は抽象化と類推についての講義になるとのこと。楽しみですね!
「スクリプトドクターのものがたり講座 第七回」
講座最終日には打ち上げ会も決定し、受講生皆さんの交流も増えてきた今日この頃。今回は【抽象化と類推】についてです。
ビジネス書等で扱われることはあれど、脚本創作の本ではあまり語られない「抽象化思考」。この実は脚本創作にもとっても重要な思考について考えていきました。
ところでもし「具体=わかりやすい」、「抽象=わかりにくい」と咄嗟に判断してしまったとしたら、これは誤り。抽象化思考とは枝葉を切り捨て本質を捉える、むしろわかり易くすための重要な思考です。この日の講義も「具体」と「抽象」の違いの説明から、抽象化に至るプロセス、そしてその利点と応用について、順を追って丁寧に進めていきました。
問題の本質を掴み、自分の限られた知識と経験を応用することによって多くの事象を捌くことを可能にするこの「抽象思考」は、まさに“カタチ”でなく“キモチ”で理解していくこの講義のあり方と近いものがあります。
相手が伝えたいことの芯を理解し、結果コミュニケーション能力の向上にも繋がるこの思考を身に着ける為に必要なことは、相手に傾聴し、そして共感すること。そしてその為には相手を尊重することが必要であり、且つその為にはまず自分に自信をつけること(=女性神話!)。
まさに前回までの積み重ねが活かされた講義は、「抽象化」から再度「具体化」へと至る、神話構造の「理解」から「創作=書くこと」へと繋がる重要なものとなりました。
さて毎回スリリングなこの講義も残るはあと3回。次回はどんな講義になるでしょうか?楽しみですね。
「スクリプトドクターのものがたり講座 第八回」
今回のテーマは【手法としての説明台詞】。
「説明台詞」というと、良くないもの・つまらないものと受け取られていることが多いと思いますが、説明台詞全てが良くないものなのでしょうか?それとも説明台詞にも「良いもの」と「良くないもの」があるのでしょうか?
今回は、「講義を終えた後は、説明台詞が好きになる」と冒頭で三宅さんがおっしゃったように、台詞全般から説明台詞のあり方まで、映画の「台詞」に焦点を絞ったみっちり2時間半の講義となりました。
前半は、映画における台詞の役割や書く際の注意点といったことを踏まえながら、登場人物を生きた人間にする方法について考えました。実際に「別れ話をきり出した夫に対する妻の台詞を書く」という実践を通すことで、台詞を書く面白さと難しさを実感できたのではないかと思います。
後半は、映画の「説明台詞」を抜粋映像を観ながら検証していきました。
観客が耳で聴くことで感情や意味を理解する登場人物の「台詞」は、説明的でなく感情的であるべきです。しかしどうしてもそこで説明台詞が必要になった場合、どのようなものが“良い説明台詞”になり得るのでしょうか?
三宅さん自ら書きおこしをされた長大な“良い説明台詞”を見ながら、一つ一つの台詞が複雑に機能していることで単調にならず、ストーリー展開とキャラクター表現を同時に進めていく技術を確認していきました。
次回は映画の「シーン」について。今回でも問題になった「構成」についてより深く考える回になるのでは? 次回も楽しみですね。
「スクリプトドクターのものがたり講座 第九回」
授業前半は前回に引き続き【説明台詞】について。
事前に見てきた映画『ツイスター』(1996)序盤の説明シーンにどのような技術と工夫が施されているか。主人公の役職や理念の過去と現在、元妻や仲間たちの過去と現在、メインとなる職業の特殊性と対処法と今後の伏線…etc といった説明すべき要素のレイヤーの多いこのシーンに注がれたアイデアの数々を詳細に確認していきました。
ところで、『ツイスター』のようなブロックバスター映画(巨額の制作費・宣伝費を投入された超大作映画のこと)の作劇に対し、「企画の眼差しが呼び込む大きなアイデアの選択」と「個別のシーンで発揮される細やかな作劇術」がしばしば混同されがちであるとのこと。後者が正当な評価を受けることは少なく、低評価の作品の中に後者が巧みな作品が多々あることが話されました。
「個別のシーンで発揮される細やかな作劇術」とはどういったものでしょうか?ここから今回のテーマ【シーンの役割と意味】に入っていきました。
映画『心の旅』(1991)のセットアップのシーンを見ながら、一つ一つで見れば何気ないシーンがそれぞれ影響し合い積み重なることで「ものがたり」を生み出す、その仕組みを書き起こしのシナリオを見ながら分析していきました。そして“シーンが生み出す効果”を確認していく途中で本日はタイムアップ。
次回は遂に最終回。前半は今回の講義の続き、そして後半は質問大会です。皆さんからどのような質問があがるのか、スペシャルな回になりそうです。
「スクリプトドクターのものがたり講座 最終回」

この日は講義と質問大会、そして打ち上げ会と盛り沢山の一日となりました。
まず前半は前回に引き続き【シーンが生み出すべき効果】について。
複数のシーンの積み重ねから出来ている映画の物語。その一つ一つのシーンには、それぞれの役割や効果があります。
その一つが「セットアップ(伏線)」と「ペイオフ(回収)」。
事前の操作によって観客に〈何らかの予想〉をさせ(セットアップ)、それと〈関連性のある〉情報を観客に届けることで後の結果にギャップを発生させる(ペイオフ)こと。映画の物語についてしばしば語られる伏線とその回収について、その技術のコツと、しばしばアマチュアが陥る勘違いや注意点等を細かくみていきました。
また他にも、観客の“感情に変化”を及ぼす仕組みや、登場人物の“選択と行動”そしてその際生じる“ジレンマ”等、物語を形作るパーツとしての“シーン”が様々な表現を担っていることを確認しながら、どのようにしてそれに取り組むべきか考えていきました。
後半の質問タイムでは、漫画や小説といった書き手の方々による悩みや、教育や医療の現場で起こるコミュニケーションにまつわる問題、はたまた映画ファンである方からの率直な疑問、等さまざまな質問が出ました。
個人の悩みや相談に、あくまで質問者本人に寄り添いながら教室にいる全員にも届く普遍性をもった言葉で返す三宅さん。質問をしていない多くの方も頷きと共感をもって耳を傾けていたこの時間は、質問タイムとはいえいつもの講義に劣らず濃密なものとなりました。
さて、受講生皆さんの「Call to Adventure(冒険への誘い)」となったこの講座も、今回をもって最後となりました。
〈旅〉を共にした皆さんともここで一旦お別れです。またそれぞれ辿る新たな神話の道行きのどこかで、再会しましょう!ありがとうございました。
アシスタント 石川